南秋支部の阿部恭士さんは昨年5月にご実家のお母さまを亡くされ、現在、毎週のように住人の居なくなったご実家を訪れ、奥様と共に片づけをされています。
鹿角市八幡平湯瀬にある阿部さんのご実家は、旅館を営む祖父が建てた17の部屋と倉庫が2つもある大きな家屋です。
処分する布団だけでも30組もあり、たくさんの家財の廃棄のためゴミ処理場にトラックを何度も走らせるなど、片づけは一苦労です。
そんな中、阿部さんのお父さんが大切にしていた本棚を見てみると、きれいに並んだ分厚い本が目に入りました。驚くことに中には、兵隊として戦地へ赴き亡くなられた多くの秋田県の戦死された方々のお名前が、陸軍・海軍、そして細かい地域に分けられ記載されていたのです。とても貴重な資料だと思った阿部さんはご自宅に持ち帰り、教会にお通しくださいました。
8月は戦争による悲しい歴史を二度と繰り返してはならないと心に誓い、平和を考える大事な月です。自ら戦争を体験されたかたも高齢になり、直接お話を聞かせて頂く機会も少なくなってしまいました。戦争は何か遠い日の、あまり実感の湧かない出来事のように捉えがちでした。今年勃発したウクライナでの戦争の様子が毎日のようにニュースの映像で流れて来ても、かわいそうという心が湧いてきてもまだどこか他人事に感じられる私たちです。
本会でも8月15日に「戦争犠牲者慰霊平和祈願の日」をさせて頂き、多くの御霊の供養をさせて頂いてきました。また毎日のご供養でも戦争で亡くなった多くの諸精霊のお戒名を読み上げさせていただきますが、なかなか実態のある生きた人としてそれぞれの人生を感じ取ることは難しくなってきています。
阿部さんのこの資料は、そんなお一人おひとりの家族の背景や生き様が伝わってくるものです。
この度、はからいを頂いて教会法座席に手に取ってご覧いただけるコーナーを作らせて頂きました。
お一人おひとりのお名前と住所、生年月日、年齢、所属部隊、赴いた戦地、戦死日、家族のお名前など詳細な情報が記載されています。
8月1日~9日まで秋田教会の法座席にて全県の冊子がご覧いただけます。その後は各支部道場、法座所に包括地区分をお届けし、8月15日の「戦争犠牲者慰霊平和祈願の日」を迎えさせていただき御宝前にあげてともにご供養させて頂きたいと思います。
混沌とした時代を懸命に生きたいのちをつなぐ役を果たしていくのは私たちだと胸に迫る資料です。
ご自分のご先祖さま、親戚、縁者の皆さまの生きた証を、ぜひお手に取ってご覧ください。合掌